おもしろプロダクション

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マクドのハンバーガーの思い出

前にティラミスの話を書いたら、もうひとつ食べ物にまつわる話を思い出したので書いておく。

僕の通っていた京都の公立高校には、1年生の夏休みに5日間くらい比叡山延暦寺にこもって勉強合宿をするというドSな行事があった。遊びたい盛りの16歳に朝から晩まで缶詰めで勉強させるというだけでも酷なのに、お寺なので食事は3食すべて精進料理。ヘルシー志向の人たちなら喜ぶかもしれないが、16歳ラグビー部の男子にとってはちっともうれしくない。というか拷問である。

挙句の果てには、夜更かしして遊んで翌日の午前中の授業をさぼって部屋で寝ていたら、見回りの先生に見つかり、昼休みにほかの生徒が昼ごはんを食べている前で正座をさせられるという辱めまで受けることになった。嫌な思い出というのは後々までしつこく覚えているものだ。

で、精進料理だが、これが全然口に合わない。それでも最初は我慢して残さず食べていたけど、しまいにはおかずを食べる気力も失せて、ごはんとお漬物とすまし汁だけを食べてほかは残すようになった。今考えるとバチ当たりだけど。

そんなわけだから、ずっとゆるい空腹状態がつづく。空腹状態がつづくと意識が朦朧としてくる。3日目くらいの晩ごはんだったと思うけど、マグロの刺身のようなものが出されたことがあった。冷静に考えればマグロであるわけがないが、そのような状況だったので冷静に考えることなどできない。勢いよく口に入れたら、それは赤い色をした刺身こんにゃくで、にゅるっとしたなんとも気持ち悪い食感が口の中に広がり、思わず吐き出してしまった。それ以来、僕は赤い刺身こんにゃくを一度も食べていない。

それでもなんとか合宿を生き延び、無事に下山できたわけだが、下山してまず向かった先が烏丸北大路の交差点の角にあるマクドナルドだった。そして店員が引くくらいの勢いでハンバーガーを3つ注文し、席に着くなり急いで食べたものだから喉に詰まったけど、喉の詰まりをスプライトで流しながら感じたあの幸福感は、それまでに経験したことのないものだった。もしかしたらちょっと泣いていたかもしれない。

ティラミスと違ってマクドのハンバーガーが好物になることはなかったけれど、それ以来今まで、食事をしていてあのときを超える幸福感を味わったことはまだない。