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長編小説のエヴェレスト

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小説が好きでよく読むのだけど、短編よりは長編のほうが好きで、それも長ければ長いほどいいと思っている。質は量に比例する。ワレ真理ヲ発見セリ。

「ページ数が多いから」という理由で(もちろんそれだけじゃないけど)、村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』が好きだし、谷崎潤一郎の『細雪』が好きだし、ジョン・アーヴィングの『また会う日まで』が好きだし、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』が好きだ。

 

長い小説のいいところは、こう言ってしまうと身も蓋もないんだけど、「読むのに時間がかかる」ことだと思っている。短編小説みたいに1時間もかからずにさっと読み終えられるのも手軽ではあるけど、やっぱり腰を据えて何日もかけて読む長編にはそれだけの良さがある。

何日もかけてずっと同じ小説を読みつづけていると、最初はとっつきにくかった物語の世界に、読みはじめた瞬間にスッと入っていけるようになるときが来る。一度それを経験すると、登場人物たちが一気に身近に感じられるようになり、彼らと同じ時代に生きて同じ空気を吸って、喜怒哀楽を共にできるようになる。そして物語が終盤に差しかかってくると、友達や家族との別れが近づいてくるような気がして、読み終わるのがさみしくなって来さえする。

これはほかの娯楽、例えばエッセイなどの読み物や映画や演劇では味わえなくて、やっぱり長編小説だけが持つ魅力ではないかと思う。

 

とはいえ、僕にもコンプレックスはあって(他人に対してというよりは長編好きを自認する自分に対して)、僕が勝手に「長編小説のエヴェレスト」と呼んでいるマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』をまだ読んだことがないのをひそかに恥じている。「紅茶に浸したマドレーヌを口に入れると昔の記憶がよみがえってきて……」というシーンが有名なやつです。

もし僕が冬の山小屋の管理人をすることになったり、縁起でもない話だけど刑務所に入ることになったりしたら、『失われた時を求めて』に挑戦したいと思っている。冬の山小屋の管理人は、僕のあこがれの職業のひとつです。こんなことを言ってるうちは、読みはじめることすらできそうにないけど……。