おもしろプロダクション

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バイク遍歴(1)

恋愛遍歴ではなくバイク遍歴について書く。といっても経験人数……じゃなくて経験台数は2台だけです。

最初に乗ったバイクはホンダのLive Dio ZX。通称「ゼッペケ」。これは50ccの原付で、高校1年の冬にそれまでコツコツ貯めていたお年玉を切り崩して買った。当時たしか新車で15万円くらいだったと思う。原付は16歳から免許が取れたから、16歳になった同じ年の秋に、友達といっしょに高校を休んで長岡京市の免許センターに行って、筆記試験と形だけの運転練習を終えてその場で免許証を発行してもらって帰ってきた。実にイージーだ。

 

高校生の世界、というかそれまでの僕の世界はとても狭くて、移動はもっぱら自転車で行ける範囲に限られていた。京都市内のローカルな地理で申し訳ないが、具体的にいうと北は上賀茂のMK(ボーリングをしにいく)、南は四条通(服を買いにいく)、東は鴨川(鴨川を東に渡るとアウェー感が増す)、西は西大路通(これより西には何もない)だった。

それが原付とはいえバイクを手に入れたことで、大げさにいえば世界が一気に広がった気がした。最初の頃は真冬にもかかわらず毎日のようにその愛車を乗り回していた。街の大通りよりは信号がない山道のほうが好きで、比叡山を越えて滋賀県にも行ったし、意味もなく貴船や鷹峯の奥につづく北の山へ入ったりしていた。

寒さに耐えきれなくなると、自販機の缶コーヒーやコーンポタージュスープを飲んだり、山道の途中にある茶店で熱々のぜんざいを食べたりして温まった。話はそれるが、そのときに食べたぜんざいに塩昆布が付いてきて、「甘いものには塩辛いものが合うんだ」ということを初めて知った。少しだけ大人になった気がした。

 

すべての出会いに別れがあるように、僕と愛車の蜜月も、ある日突然終わりを迎えた。友達にバイクを貸していたら、その友達が嵐山かどこかに置いていた隙に盗まれてしまったのだ。尾崎豊は盗んだバイクで走り出したが、僕は盗まれたバイクで走り去られた。この差はとてつもなく大きい。しかも運の悪いことに(というか)その友達は無免許だったため、警察に盗難届けを出すと話がややこしくなりそうなので、結局出さずに終わった。

友達はそれから5年くらいかけてバイク代を返してくれたが、盗まれた直後はもうお金が残っていなかったので買いなおすことはできなかった。

この出来事から僕が学んだこと。別れはいつも突然に訪れる。C'est la vie.